頭の中の気分で気ままに連載小説書いていきます、 よろしかったらどうぞ、週一ペースであしからず。 第一弾はグリーンハイツ






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グリーンハイツ 第三話

カランコリン、カランコリン。



ドアを開けると、何故毅がこの店を選んだのかが、なんとなく分かった。それは店の作りがどう

とかの問題ではない。店の作りに関して言えば、本当に渋い、いわゆるBARだった。

それこそ、今時の店みたいに、わざとレトロ調の雰囲気にしているのではなく、建物や,店の内装

、カウンターの材質まで、本当に時代を感じる使い古された渋い店だった。

では,金曜の九時だと言うのにお客さんの数が、カウンターの端で黙々と

大学ノートに何かを書いている、どうみても小奇麗じゃない若者一人だけだった。

という事だけでもない。

カウンターの奥に、二畳位の小さな部屋らしきものがあるのだが、どうもその部屋の座椅子で、

私たちが入ってきた事にも気づかず、こっくり、こっくりと、転寝をしているマスターらしき人物に、

気づいたからだった。なんて放任主義の店なんだ。

だが、毅は、手馴れた様子で、

「ここ座ってて」

と、この店で唯一の、ちょうど四人座れるテーブルに私たちを案内し、何のためらいもなく、

いねむりしているマスターに声をかけた。

「ママ、おはよう、このボトル持っていくからつけといて、あと氷とグラスお願いね」

私とくるみは目が合ったまま動けなかった。なに、ママ!!それを見ていた亜矢子が、笑いをこら

えながら、まあそう言うことだからよろしくね、と、これまた目で訴えていた。しばらくすると

そのママが、グラスやら氷やらをカウンターの上に出し、それを毅が当たり前のように、

私たちが座るテーブルまで運んできた。そしてこう言った。

「いいでしょ、ここ、つまみもまあまあだよ」

我が家のように振る舞う毅に、私たちは,さすが東京の人間はちがうな、と、違う意味で感心して

いた。するとそこへ、寝ぼけ眼のママと言うか、おばあちゃんがやってきた。確かによく見ると

スカートをはいていた。

「いらっしゃい、久しぶりだね、ゆっくりしていきな」

なんと淡白な事か、そんだけ言ってすぐ戻りかけたので、私たちはあわてて

「すいません、注文いいですか!」

と思わず叫んでしまった。もし、彼女をそのまま行かせてしまったら、もう二度と起きないよ

うな気がしたからだ。だが、慌てて呼び止めてしまったものの、肝心の注文を決めておらず、

あんまり待たせると、今度はこの場で寝てしまいそうなので、大至急、毅おすすめの焼きそばと、

一応、チーズの盛り合わせをたのんでおいた。

おそらく普段、横浜で飲んでいて、もしこんなお店に万が一、間違えて入ってしまったとしても、

間違いなく2秒で店を出ていただろう、その位どうでもいい店だった。

しかし、何故か空気は笑いで満ちていた。それはあのママのせいなのか、それとも今夜の

気分なのか、まあどっちにせよ、くやしいながらこの店を少し気に入りかけていた。

あっそうだ、言うのを忘れていたが店内には、ザ・バンドのクリプル・クリークが流れていた。



「じゃあ、本日二度目のかんぱーい」

のりにのってきた毅が、音頭を取った。しかし私は、どうしてもあのおばあちゃんが、料理できる

のか心配で,思わず聞いてしまった。すると毅は

「大丈夫だって、心配いらないよ、本当に旨いんだから、出てくればわかるよ」

きっぱりそう言った。そして

「そんな事よりさ、堀、この店でなんか思い出さない」

逆に、そう問い掛けてきたのである。私は、えーなんのことやらと、不思議そうな顔をしていると、

「だから、名前、店の名前だよ」

と毅が言った。その瞬間、ダムが決壊したかのように、一気に記憶がよみがえって来た。

ふるさとか。私は、何故毅がこの店を選んだのか、勘違いしてたみたいだ。

そして完全に、この店のファンになってしまった。

「なるほど、毅もにくい演出するね、そうか、そう言うことか」

毅のそんな粋な計らいで、私の頭の中は一気にあの頃に帰っていった。

そう言えば、昔、俺たちが住んでいた家の近所にも「ふるさと」と言う名前の小料理家があったっ

け、そしてその店も、おばちゃん一人で切り盛りしていたよな。そうだったな。



「毅、そう言えばこの間、うちのお袋が、たばこ屋のきよこちゃんにあったらしいよ」

「本当、どこで」

「どこって、大丸ショッピングセンターだよ、まだ一人で店やってるらしいよ」

「そうなんだ、まだやってるんだ、そうか・・・懐かしいな・・・・じゃあ元気なんだね」

「だと思うよ、それからうなぎ屋がつぶれたらしい」

「それは、古いよ,もう三年以上も前の話だよ」

そうやって、私たちだけで盛り上がっている昔話は、くるみも亜矢子も、一切知る由もなかった。

なんとかショッピングセンターだの、きよこちゃんだの、さっぱり意味がわからなかったはずだ。

だが、徐々に、知らず知らずのうちに惹かれはじめ、気づけば、のめりこんでいた。

なぜなら、それだけ私たちが一心不乱に、取り付かれたように語り合っていたからだろうし。

そして、なんと言っても、それだけグリーンハイツが、斬新で魅力的だからだろう。



毅が、煙草に火を点けようと、一瞬、間があいたその時、頃合いを見計らったように、

湯気の立ち上った最高に旨そうな焼きそばと、山盛りのチーズ盛り合わせが出てきた。

「ゆっくりしていきな」、そう付け加えて。



それでは、行ってみましょう、私と毅が生まれ育った城。グリーンハイツへ。

つづく


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この記事に対するコメント

早くつづき〜!
【2006/09/27 23:12】 URL | おめる #9L.cY0cg[ 編集]

昨夜はお疲れ様♪
早速、グリーンハイツな世界へやって参りましたょd
ホリらしい語り口で昨夜の続きのような錯覚に(笑)
是非、気ままに続けて執筆していってくださいな〜
よい意味で『適当』にね!(うちらローカルにとっての褒め言葉として)

今度、あらためてウチにいらっしゃいな貧乏部屋飲みは楽しいょ(爆)
【2006/10/29 15:10】 URL | SHiNDiE #-[ 編集]


ほりさん、おひさしぶり!
独特のワールドを築いていますね。
早く続きを〜!
【2006/12/07 13:21】 URL | すぱいの10番 #-[ 編集]


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