Author:ホリシュウ ようこそ、気ままに読んでみて下さい
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「おじゃましまーす」さすがにもうそろそろ新婚と言う感じの、こ洒落た部屋だった。どう考えても亜矢子のセンスだと思うが,シンプルな中に少しずつアジアンテイストをちりばめたような,すごく雰囲気のある落ち着く部屋だった。唯一、毅の匂いがしたのは漫画が並んでいたトイレぐらいのもんで後は全く無臭だった。それでは何故、毅のセンスではないと言い切れるのかというと、時は高校時代にさかのぼる。私は、夜な夜な親の目をぬすんで毅の部屋に遊びに行っていたのだが、それがまたひどかったのだ。足の踏み場もないなんて遠い昔に通り過ぎていて、部屋全体が足の踏み場なのだ。その部屋の真中にどかんとひいてある江戸時代から上げた事もないようななんとも不気味な布団、まず間違いなくキノコを栽培していたのだろう、そして、なんと言っても極めつけが部屋に居る間中くしゃみが止まらないのである。いったい何が生息しているのであろう、未だに謎である。とまあ例を挙げるときりがないのだが、要するに毅のセンスじゃないと言う事はわかって頂けたろう。プシュッ プシュッ プシュッ「じゃあとりあえずよろしくと言う事で、かんぱーい」爆進号で真夏の3時間ドライブと言う前代未聞のチャレンジをした結果、脱水寸前まで体を酷使していたので、この夜のビールは格別だった。となりを見ると、戦友のくるみも無言でゴクゴクとあたかも砂漠で路頭に迷った旅人がオアシスにありつけたかのようにビールを吸収していた。普段、自分の家で飲むときなどは二人で缶ビール1本、そのあとすぐ焼酎となるのだが、やはりこの夜は暗黙の了解で2本目、3本目と炭酸でお腹が膨れ上がるまで黄金の水を楽しんだ。「こんなもんしかないけれど、よかったらつまんで」そしてさらに、水分補給を無我夢中で楽しむ我々に対し、亜矢子がこれまた最高に気の利いたアイテムをテーブルにならべてくれたのだ。ちなみにメニューはビールの永遠の親友、えだまめを初め、奴、焼き魚、サラダ、お浸し、それにフライパンではじけまくったポップコーンと、思わずあんたも相当やる口だね、と言いたくなるような代物ばかりだった。それに加えこの後も頃合いを見てはちょこちょこと、つまみを作っては出してくれていた。私としては酔っ払うのにこの上ない状況が整いすぎていた。久しぶりに会った幼なじみ、その気心を知りすぎている幼なじみの落ちつく家、にもかかわらず居酒屋並みの待遇、そしてなんといっても、今夜はお泊り、お家に帰らない。テンションを上げるなと言う方が無理である。と言う事で、自然とお酒の方もビールから芋焼酎へと、テンションを上げていった。それから2時間ぐらいは経っただろうか、二人の馴れ初めから両親の話までと、とにかくたわいもない話をしながら4人の親交を深めていった。「しかし二人とも本当に仲良いよね、あたしなんか幼なじみとかいないから本当うらやましいよ」そう言う亜矢子に、くるみも、うんうんとうなずいていた。実際そうなのかもしれない、この世に生を受けて一年にも満たないうちからの知り合いが、33年の時を経て、今だにこうしてたまに会って飲んだりしているのだから。「まあそうかもね」ちょっと酔っ払ってきた毅が恥ずかしそうに答えた。「それに同じ年でしょ、本当珍しいよね」ほっぺを真っ赤にしながらくるみが言った。「そうだよな、周りから見たら珍しいかもしれないな、でも俺たちには別にあたりまえなんだよねだって物心ついたときにはすでに存在してて、何するんでもいつもいっしょだったから、涼太も含めて3兄弟みたいなもんなんだよな」私がそう答えると毅が「そうそう、だから不思議なことじゃないんだけど、だけどある意味ラッキーかも、俺一人っ子だけどそんなにさみしくなかったかもしれない、本当3兄弟だね」ちなみに涼太とは、私の3歳年下の弟で、ある意味毅の弟でもあった。「へー良かったねそう言う環境で、でもそれが今だにだもんねやっぱうらやましいよ」お酒を作りながら亜矢子が言った。ちなみに、この時みんなのお酒を作ってくれていたのだが、それがなんとも豪快だった。手で氷をつかみ、グラスにどかどかと入れ、焼酎をドボドボと注ぎ、どうぞ見たいな、見かけからは想像もつかないが、かなりのワイルドウーマンである。もちろんその中に初対面の私たちの分も入っていたが、しかし、その迫力に圧倒され「手洗っの」とはとても聞けなかった。(余談)「確かに、俺たちもまさかこの年までいっしょに遊んでいるなんて思ってなかったもんな」グラス片手に私が言った。「まあそうかもね、あの頃はそんな先の事なんて毎日刺激が強すぎて、とても考えていなかったもんね。しかし面白かったよな、三号さんとか」毅の話に、私は思わずふきだしてしまった。「やばかった、やばかった、いやー本当強烈だったよ」私たちは周りに人がいることをすっかり忘れそうになっていた。その時、芋焼酎の豪快ロックがほどよく体内を回り始めたくるみがおもむろに聞いてきた。「そう言えば二人って、同じアパートに住んでいたんだっけ」そう、ここからが本番である。確かに今までの話で子供の頃から仲が良かった事は、ある程度わかって頂けたろう。所が、所がである。この二人、私、堀井英之と辻口毅がどんな環境、どんな状況で産まれ育ってきたかまではわからないだろう。今思えばかなり強烈な環境だったような気がするし。逆にかなりついていたような気もする。まあとにかく、相当面白い幼少期を過ごさせてもらった事は間違いない。そして今から、その時代にタイムスリップして頂こうと思う。毅が言った「グリーンハイツ!!どんなとこだか聞きたいでしょ?でもその話をするには少々お酒が足りないような気がするな。近くに朝までやってるどうでもいい感じのバーがあるんだけど、そこ行かない」普段はそんなに飲む方ではない毅のそんな提案で、私たち4人はじっくり陶酔するため、歩いて5分程度の所にある(ふるさと)と言う場末のバーにステージを移す事にした。私は内心かなり嬉しかった。それは毅のテンションが超久々にウナギのぼりだったからだ。ただ、女の子たちはふるさとに着くまでの間ずーっとぶつぶつ文句を言っていたが。「だからグリーンハイツって言うアパートに住んでたんでしょ。別に自分の家でもいいじゃない。なんでふるさとなのよ」と、しかし私たちはそんな事おかまいなしで、すでに顔からは笑みがこぼれていた。何かをたくらんでいるかのように、にやにやと。「まあまあ焦るなって、これからゆっくり話すから」と心の中で言いながら。つづく
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学